スティーブ・ジョブズがいたAppleの製品が素晴らしかったことは、改めて言う必要もなく、皆がそれを分かっていることだと思います。ジョブズの死後、革新的な製品が出て来ない中、ようやくジョブズの遺作と言われるMac Proが2013年12月に発売されます。
Appleの製品は、ジョブズのこだわりから、その製品の内部まで美しいことで有名ですが、このMac Proにおいても内部パーツの整然とした様子を見せられると感動します。他のアップル製品にも言えることですが、必要最小限に抑えることによって生み出される研ぎ澄まされた美しさがそこにはあります。省いていこう、できる限りシンプルにしようというApple社の姿勢は、iPod から液晶画面を取ってしまって、iPod shuffleを作ったときに明確に示されました。
茶の湯道具の重要な位置を占めるお茶碗ですが、その作り手の中に、千利休に指名されて茶碗を作り始めた「樂家」という家があります。初代は長次郎という人で、この人が利休から直接茶碗を発注されたのです。樂家は現代まで続いており、当代は15代となります。樂のお茶碗は、樂茶碗、また黒いものは黒樂とも呼ばれていて、茶の湯といえばこれ、という感じなので、茶道を習っていない人でもなんとなく知っているのではないでしょうか。
お茶を飲むために特別に作らせただけあって、お茶に関わること以外は極力そぎ落としているように感じます。それでいてそこには、機能や情報が充分に含まれています。
樂茶碗とMac Proの削ぎ落とされた美しさには、その外観が似ているという以上に根底に流れている思想に共通項がある、とぼくには感じられるのです。