「大友良英&あまちゃんスペシャルビッグバンド」のコンサートへ行ってきました。どうしても生で観たかったのは、これは代えがきかないもの、つまりぼくの考える「バンド」である、と感じたからです。それを確かめに行きました。
よくブラスバンドの人たちが「宇宙戦艦ヤマトのテーマ」なんかを演奏していますが、そういう演奏を聴いても、心に響くものをぼくは感じてきませんでした。おそらくそれは、譜面をなぞっているだけだからと思います。自分で作り、自分で演奏をして、という曲がぼくは好きです。さらに言えば、自分たちで作り、自分たちで演奏をして、というほうがもっと好きです。何人かで集まって曲を作っていく、演奏をする、ということは一人でやるよりも難易度が高いし、とんでもないものが生まれる可能性も高いからです。さらにはこの人たちでないとこの演奏はない、という「かけがえのない」感じもぼくにとって重要な要素なんです。その要素を持つものこそ、ぼくの理想の「バンド」です。
ドラマ「あまちゃん」は観ていなかったのですが、大友良英さんが音楽を手がけている、ということは知っていました。ある日、「秋の夜長のあまちゃんライブ」という放送をたまたま観て、そこで、このあまちゃんビッグバンドの存在を知ったのです。そして、何よりぼくの興味を引いたのが、大友良英さんが書いた譜面です。画面に映し出されたそれは、音符なんて全然書かれていなくて、ここはこんな感じで、ここからはダーッとなって、みたいなものでした。実際の作曲やアレンジの現場、その手法は憶測するしかありませんが、大友良英さんがある程度の道筋を決めて、あとは他のバンドメンバーにうまく任せているのだと思われます。これって、ぼくが理想とするバンドの形であるし、それを何十人もを相手にまとめ上げることができる大友良英さんってすごい!となりました。
そして、ライブを観に行きました。
まさに「バンド」でした。ぼくの理想である「バンド」でした。楽しい一体感と危うい緊張感が同居する素晴らしいバンドでした。そして、1990年代の大友良英さんのイメージである、ノイズや即興演奏という前衛的なものもうまく取り入れてあって、息をするのを忘れてしまったほどの瞬間もありました。特にサインウェーブを奏でるSachiko.Mさんをゲストに迎えた2曲が素晴らしかったです。そのうち1曲は震災のシーンで使われたそうですので、記憶に残っている方も多いのではないでしょうか。
あまちゃんのオープニングテーマをアンコールに奏でて終演となり、そのままスカのリズムにのって帰宅しました。道中、大友良英さんのやって来られたこと、バンドをまとめる力、音楽におけるコミュニケーション能力など、考えれば考えるほど、すごいモンスターが居たものだ、と感心しておりました。ところがステージでしゃべらせると、物腰が柔らかくて何ともやさしい。
…きっと本当のモンスターです。