ぼくが初めて海外に行ったのは、25歳の時でした。大学時代に海外旅行に行っている人も多かったので、ちょっと遅めの海外デビューでした。
新卒で就職をし、上司に3年くらい勤めた者の言うことでないと聞かない、と言われたので、3年間頑張りました。この期間のいわゆる普通のサラリーマン生活は、今でも大変役に立っていて、単純に良かったな、と思っています。しかし、当時は吐くほど会社に行くのが嫌で、駅で倒れて救急車に乗る所まで行きました。
3年間勤めても、やっぱりその仕事を続けている自分の未来に希望を持てず、退職させてもらいました。
救急車で運ばれた2週間後、ぼくは友だちとロンドンにおりました。倒れたときは、この体調では、しばらく海外とか無理かな、と考えていたのですが、辞めてロンドンに着いたら、体調が快復、絶好調になりました。
思うに、圏外だったからです。電話とかそんなことだけではありません。話されている言葉はもちろん、表示標識、電車に乗れば切符の形すら違う。あらゆるものが圏外でした。朝起きて、考えることは、今日はどこに行こうか、それだけです。そして、すっかり体調が良くなり、自分でもびっくりしました。
このお話は、携帯やメールがまだ普及していないときのお話です。でも、根本的には、変わらないですね。圏外をつながりの外と言い換えてもいいかとも思います。
圏外カフェとか圏外リゾートとか、これからはたくさんできるでしょう。今は圏外こそが最高の贅沢ですから。