ぼくにとって映画は音です。音の使われ方が重要なんです。
BGMとかそういうことではなくて、日常で鳴っている音そのものです。人間の耳はよく出来ていて、雑踏の中で特定の人の話し声を聞き分けたりできます。鳴っているのに他のことに集中していたので聞こえなかった、というような経験を皆さんもしたことがあるのではないでしょうか。つまり、同じ音環境の中にいても、各々で聞いている音は違うのです。
映画の音の表現では、ある程度音の環境をデザインすることができます。聞いて欲しい音の大きさを調整することによって、意図したバランスを作ることができるからです。結果、普段は気にかけないような音に観客の注意を向けることができ、新しい表現につながって行きます。
映画「利休にたずねよ」は、とても音にこだわった映画だと感じました。釜の湯の沸く音、茶碗に茶杓を打つ音、茶碗にお湯が注がれる音、茶筅が茶碗の底を掻く音、身体の動きに伴った着物の生地の擦れる音、末期(まつご)のお茶を飲み干したあとに吐く息の音など。細部に渡って作り込まれた音を聴くことができました。じつに心地良かったです。
そして、歌舞伎俳優の市川海老蔵が千利休役なわけですが、さすがに着物での立ち居振る舞いが美しかったです。演技では、「龍馬伝」での武市半平太役が素晴らしかった大森南朋がここでも光っておりました。10年ほど茶道をされているという中谷美紀も間違いはなく、茶道をしている人もしていない人も楽しめる映画です。
2013年2月にお亡くなりになられた市川團十郎と、息子市川海老蔵の共演も見所です。映画での競演は、これが最初で最後となりました。ご病気で大変だったとはスクリーンからは微塵も分かりませんでした。大変な凄みです。この共演シーンだけでも価値があるかもしれません。
それでもぼくのおすすめシーンは、海老蔵の飲み干したあとの、あの音です。ぜひ映画館で市川海老蔵の吐息を聴いてみてください。絶妙な加減でゾクッとしますよ!
———
原作は茶道を習っている人のほうが何倍もおもしろいと思います。
文章から光景が浮かんでくることでしょう。
また、茶の湯の生まれた戦国時代の空気を感じることもできます。
↓↓↓↓↓↓↓
武市半平太を演ずる大森南朋の名演が観られる、シーズン2。
半平太に関連する回は、何度観ても号泣の連続。
思い出すだけで泣ける・・。
↓↓↓↓↓↓↓