炉と風炉、半年ごとのサイクルが働きかけるもの

 

茶の湯は季節感を大切にしています。季節を感じさせる細やかな亭主の配慮が茶室にはあります。そのほかにも、大きく季節によって変わるものがあります。炉(ろ)と風炉(ふろ)です。冬には畳の一部が切ってあって、その中に炭が置かれ、釜が置かれ、湯を沸かします。夏になると、炉は畳の上に上がってきて風炉となります。もちろん釜も畳の上に上がってきます。道具もお点前もいろいろ変わります。ふすまを開けておいたり、閉めたりというようなことにも変化があるのです。

 

半年ごとに炉と風炉が入れ替わることになります。5月から10月までが風炉で、11月から4月までが炉の季節です。そして、炉には炉のお点前があり、風炉には風炉のお点前があります。ということは、季節の変わり目には、半年前にやっていたお点前を久しぶりに行うことになります。お稽古をしていて、半年くらい経って、ようやく慣れてきたなぁ、というころにお点前も風景も変わってしまうのです。習い始めたばかりのときは、せっかく慣れてきたのに、なんてうらめしく思っていました。しかし、この半年のブランクを何年か積み重ねてくると、久しぶりの点前でも不思議なことに自然と身体が動くことが多くなってきます。まさに年月をかけて身体が覚えてくる感覚です。

 

最初は、習得させないための嫌がらせじゃないのか(^^;くらいに感じておりましたが、このブランクにも意味を見出すことができました。そのことに気づいてからは、意識的にあまり頭で考えないようになりました。もちろん考えなくてはいけない場面も多々あるのですが、どのくらい身体が覚えているのか、ということを試す意味でもあまり予習せずに稽古場に行ったりとかしてみました。

 

先輩方を見ていると、皆さん熟成されたお点前、所作をされています。2年や3年で出来上がったものではないことが今ではわかります。習い始めて3年くらいは早く沢山覚えたくて必死でした。しかし、4年目くらいからは、ギアを落として、稽古に取り組むようになりました。茶の湯の季節とともにあるサイクルに身を委ねることにしたのです。