今では、自宅で録音することも、CDを作ることも簡単にできますが、20年ほど前には、それはとてもむつかしいことでした。音質を無視すれば、カセットテープに録音するMTR(マルチトラックレコーダー)なんかがありましたので、宅録していましたが、今考えると恥ずかしいものです。
録音した後でエフェクトをかけるなんて高度なことがぼくにはできませんでしたので、とにかく録音時にある程度完成した音である必要がありました。ギターを録音するときなどは、ライブでやっているように途中でエフェクターを切り替えたり、そのように忙しいことをしていました。ボーカルなんて、天然リバーブで録れるようにお風呂場で歌ったりしていました。そんな感じのクオリティの低いものを、あてもなく、しかし楽しくて仕方なかったので作って遊んでいました。
hot buttered pool を始めて数年間、十三ファンダンゴを中心にライブは頻繁にやっていました。でも、CDを出す、ということはまったく考えてませんでした。自分たちの作ったものを値段つけて売るなんて、考えもしなかったからです。ライブについても、お金を払ってきてくれていることを考えると、そのジレンマで悩んだりもしていました。そこのところは今もあまり変わりませんけど。
お金と芸術。経済と音楽。ビジネスとロック。
そういうことにはいまだに答えを出せていません。
それはさておき(逃げた…^^)
1996年頃のお話。CD出すとかまったく考えていなかったぼくを変える出来事がありました。
十三ファンダンゴへ客として行き、ライブを観ていた時のこと。若い女の子2人がぼくのところにやって来て、「hot buttered pool の方ですよね?CDとかないんですか?」と訊ねてくれたのです。ぼくらみたいな者の楽曲を、あのキラキラしたコンパクトディスクで、デジタルでカキーンとした音質で聴きたいだとぉ??なななななこれはえらいことです。
そんな人が1人でも2人でも居る、ということにとても驚き。1人でも居るのなら、ぼくはちゃんと録音して、CDを作りたいと強く思ったのです。そうして、OMEGA SOUND の門を叩き、スタジオでの録音というものを初めて体験することとなりました。
いまでは、2児や3児の母になっているやもしれない、当時の少女2人にはとても感謝しています。彼女たちは、CDを聴いてくれたのかな。
hot buttered pool を好きだ、と言ってくれる人たちのおかげで、ぼくは何とかやれているのかも知れません。
好きだ、と言ってくれるうちの一人、zirconium のハセガワ君が、hot buttered pool のライブをビデオで撮ってYouTubeにアップしてくれました。
ATAのドラムにグッと近づいて観ているような迫力のある映像です。とても気に入りましたので、ここでも紹介します。
zirconium のビデオ、とてもいいのです。こんなの作ってみたい。
曲も好き、自分の曲だったらよかったのに、という気分になります。
それはきっと、言葉の選び込みのところなんだと思います。いい。いいなぁ。