幼少の頃、プロレスを観ることは禁じられていました。親の目を盗んで、アントニオ猪木やストロング小林の試合を観ていました。プロレスを観られない暗黒の時代は長く続きました。ところが、忘れもしない1981年4月、「タイガーマスクが出るねんて」という意味不明な理由で母親の許可を得て、プロレスを堂々と観ることができるようになりました。
タイガーマスクが好きで、タイガーマスクの覆面を自分で作るまでになりました。覆面を作るために、小学校では手芸クラブに所属していました。所属していた男子は、ぼくとオカマちゃんの2人だけでした。タオルを黄色に染めて、そのタオルで覆面を作ります。被れるようになるまではすぐにできるのですが、問題は模様です。スマホもパソコンもない時代です。黄色いタオルに油性ペンのマッキーで模様を描いていきますが、記憶に頼るほかありません。プロレスの本を買うことなんて許されていませんでしたので、本屋さんまで行って、タイガーマスクの覆面の模様を脳裏に焼き付け、走って家まで帰ります。そして、覚えたところまでマッキーで描いて、分からなくなったらまた本屋さんに走ります。そんなことを繰り返して、タイガーマスクの覆面を完成させました。
新しい覆面が完成しますと、古いほうの覆面を使って、虎ハンター小林邦昭戦を再現します。「タイガーマスクの覆面に手がかかる!」と自分で実況しながら、目の穴のところから破きます。1回だけできる極上の遊びです。
あの時の自分にiPhoneで、ほらタイガーマスクだよ、って画像を見せてやりたいです。
昔は大変だったねぇ。
明日は後編「ろくに弾けないのにギターをやり始めたお話」です。