かつて藤田美術館の近所に住んでいました。男爵と呼ばれた人の邸宅が残っているというようなことは知っていましたが、その藤田伝三郎男爵が茶人であったということを知って、興味を持ったのは、自分が茶道を習い始めてからです。
数寄者、藤田伝三郎の収集物を観られます
藤田伝三郎さんは、数寄者(すきしゃ、すきものとも読みますが、好き者ちゃいますよ)で、多数の美術品を収集されました。そしてそれらの美術品を展示して見せてくれるのが藤田美術館です。藤田美術館は、年に2度ほど展覧会を催します。年に2回ですので、なかなかお目当ての物が出ていないということが多く、ぼくもこれまで何度か藤田美術館を訪れたものの、巡り合わせが良くなくて、「カメの香合」を拝見することが出来ておりませんでした。
「カメの香合」は、正式には「交趾大亀香合(こうちおおがめこうごう)」といいます。香合とは、茶席でお香を運び出すときに、そのお香を入れておくための器のことです。茶席では炉にお香がくべられるので、とても良い香りが漂っているものなのです。
病床で落札を確認した香合
このカメの香合、交趾大亀香合を藤田伝三郎さんが手に入れたときのお話が残っています。これは明治45年、伝三郎さんが亡くなる10日前に落札されたそうです。落札できたことを病床で聞き、現物が届いた時には昏睡状態でしたが、これを枕元に置いた状態でお亡くなりになったということです。藤田男爵が死ぬ間際になっても頭から離れず、どうしても欲しかったのが、このカメの香合なのです。当時の価格で9万円で落札されています。貨幣価値を単純に1万倍だと考えると、現在の感覚では9億円で落札したということになります。
こんな逸話を聞かされると、カメ好きのぼくは藤田伝三郎さんのことがとても好きになりました。そして、どうしても彼が欲しかったカメの香合を、自分自身の目で観てみたい!と思うようになりました。だけど、これまで何度か藤田美術館を訪れても拝見することは叶っていませんでした。
カメの香合についに出会った!
阪急百貨店うめだ本店で、「藤田美術館展」なるものが開催されていました。茶道の教室で先生から招待券をいただいて、何の気なしに稽古帰りに寄りました。カメの香合のことなんてすっかり忘れていたし、期待もしていなかったそのとき、目の前にカメの香合が置かれたケースを発見しました!おおおお、ぼくは興奮し、早く帰らねばならなかったのですが、とにかくこのときを逃してはいけないと思い、ぐるぐると何周もカメさんの周りを回りました。
やっぱり本物は違う
交趾大亀香合は、現存するものが少ないそうで、なかなか本物を観られません。ぼくは写し(フェンダージャパンみたいなもんです)のそれを持っています(上の写真の物です)が、本物はぼくのより小ぶりでした。そして、色に落ち着きと風合いがあって、とても重厚に見えました。(触りたい・・)と心のなかでつぶやきましたが、ガラスケースに入っておりますので、それも叶いません。しかし諦めきれないので、持ったらどんな感じなんだろうと自分の手のひらをガラスケースの前に差し出して、手に載せたところを何度もイメージしました。かわいい!触りたい!欲しい!はぁ…。
また会えるよ
藤田美術館は2014年、開館60周年だそうです。だから「藤田美術館展」を阪急百貨店のギャラリーでやるなんていう不思議なことになっていたのです。そして、藤田美術館のウェブを確認しましたら、ちゃんと藤田美術館でも「開館60周年 特別展」を開催する予定でした。出品予定リストを見ますと、9月からの展覧会に、また交趾大亀香合も出品されるようです。カメの香合をご覧になりたい方、2014年9月13日から12月7日まで開かれる「開館60周年 特別展」に藤田美術館まで行かれると会えますよ。
ぼくももう一度拝見しに行きます!