ライブ演奏者は永遠に自分の演奏を聴く側になれない

自分では観られない

 

初めて自分の声をテープレコーダーに録ってそれを聴いたとき、なんて声してんだ、と誰もがなったのではないでしょうか。ましてや、それが歌声なんかだったりしたら、恥ずかしくて停止ボタンを押したくなったでしょう。普段自分が聴いている自分の声は頭蓋骨とかに響いているのを聴いているので、他人が聴いているそれとは違ったものになっているのです。つまり、自分の声は、他人が聴いているようには絶対に聴けないということになります。

 

同じようにバンドのライブ演奏も絶対に自分で観ることができません。録音したものは聴くことができるし、録画した動画なら観ることができますが、自分の声が聴けないのと同じように、まったく同じではありません。

 

今では慣れてしまいましたが、やはり自分のバンドの録音を聴いたときは愕然としました。さらにぼくは歌っていますので、ドラム、ベース、ギターの音だけでなく、自分の歌声もいくらかは頭に響いています。なので、余計に演奏しているときに聴こえているものと違うように感じるのです。

 

音源や動画に比較して、ライブ演奏が決定的に違うのがそこです。絶対に自分で自分の演奏を体験することができないからです。こうやって書いていると、ライブだけが特殊だ、みたいな流れになっていますが、そもそも録音技術がなかった頃は生で聴くしかなかったので、音楽というものは演る人と聴く人によって、もともとは成り立っていたと言えるかもしれません。

 

ぼくはライブ演奏における、演る側と聴く側の感覚のズレが好きです。そして、そのズレを許容した上での一体感というものも好きなので、やめられません。思えばずっと、観たことのないhot buttered pool との戦いをライブでは行ってきたのかもしれないです。