お客さんのお稽古もする茶道

床の花

 

こんな話をどこかで聞いたことがあります。

 

納豆を食べるとき、ある方のお母さんが「茶碗のふちに納豆を付けないで、ご飯の上だけにおいて食べるほうがお上品ですよ」と常々言っていたそうです。しかし、大人になり、自分で洗い物をするようになって、お母さんは茶碗を洗うときに洗いやすいようにそう言っていたに違いない、と気づいた、というようなお話です。

 

親元を離れて独りで暮らすようになると、いかに親がいろいろやってくれていたのか、ということに気づきます。また、ぼくは実感しておりませんが、親になった人たちは、そういうことを細かく感じておられることでしょう。教えられていた人が教える立場になったときなどにも同様の気付きがあるように思います。

 

茶道では、お茶を点てることだけを稽古しません。お茶を飲むことも稽古します。基本的には、お茶を点てるのは亭主で、飲むのは客です。主客両方のお稽古をすることによって、互いの側からどう見えるか、感じるか、などを学ぶことができます。

 

お客さんの心を知ってこそ、亭主が心を入れられる、おもてなしができる、ということです。少しずつのお稽古の積み重ねで、だんだんと理解が深まっていきます。茶道を習っていると、よう出来とるわな、と思うことが多くあります。