茶の湯の席では、人は大きく2つに分類されます。亭主と客です。なので、茶道では、お茶を点てて出す亭主としての稽古とお菓子とお茶をいただく客の稽古をすることになります。実際にはお点前をすることより、お茶会に参加してお客さんになることのほうが多いので、お客さんとしてのことをよく学んでおくと役に立ちます。
お客さんにも種類があって、正客というメインゲストは、亭主に道具についてたずねたり、お仕舞いを代表して告げたり、色々と大切な役割があります。次客という2番目の客、そして、三客、四客と続いていくわけですが、末客という一番最後の席に座る客にも何かと役割があります。つまりどこに座ろうが、ある程度役割があって、気を抜けないのが茶の湯の席なのです。いきなり「めんどうそう・・」という風に感じられるかもしれませんが、それぞれが役割を果たすことで、その場の一体感も生まれてきます。それがまた醍醐味でもあるのです。
初心者には、正客や末客はむつかしいです。なので、もし、大寄せのお茶会などに招待されて、出席することになったなら、1番目と最後の席ではなく、できるだけ間に座らせてもらいましょう。服装は、スーツでOKなら着物ではなくスーツで行くと良いでしょう。「お着物だから、どうぞ高い席へ」というわけのわからない理由で高い席、つまり正客の席を薦められることがあるからです。特に男性は着物で行ったりしたら、格好の的です。「高い席はぜひ男性に」というさらにわけのわからない理由で高い席に座らせられる確率が急激に上昇します。男性は本当に気を付けましょう。
お客さんらが席入りするときには、必ず「高い席の譲り合いミニコント」が始まります。「先生、どうぞ」「いえいえ何をおっしゃいますやら、先生こそどうぞ」「わたしなんにも分かりませんので、どなたかお願いします」みたいな感じで譲り合うミニコントが始まります。はは、またやってるねぇ、とこれも込みで楽しめる余裕があると良いのですが、「あ、男性がいらっしゃった、どうぞどうぞ」なんて、白羽の矢が立つことがあるので、いつも余裕はありません。
やはり正客には道具の取り合わせを読み解く能力が必要で、相当の知識、経験が必要です。ミニコントの末、「何もわかりませんので」なんて言っていた人が正客の座に座り、どうなるのだろうか・・とヒヤヒヤしていたら、大抵はとても見事に床や道具のことを亭主にたずねたりしてスムーズに進みます。「何もわかりませんちゃうやん・・」と心で呟きながら、やっぱり高い席に座らなくて良かった、といつも胸をなでおろしているのです。