ある日のスタジオ練習の帰り、ケースに入れたギターを持って電車に乗っておりました。
横並び4人がけのシートに座っていて、ギターは脚の間に挟み込んでいました。
横に座っている男が、ぼくのことをジロジロと見てきます。ガンガンに気配を感じます。
ぼくは細身ですし、ギターを脚の間に挟んでいるとはいえ、そんなにスペースを取っているとは思えませんでした。それでもギターが気に喰わないのか、ジロジロとぼくの方を見てきます。
4人がけのシートには、ぼく、その男、別の人A、別の人B、という並びで座っていました。
やがてある駅で、別の人Aと別の人Bが降りました。車内は少し空いてきました。
4人がけシートは、ぼく、その男、空席、空席、となったわけです。
しかし!その男が動きません。普通であれば、密着しているのに気を使い、ひとつ横へずれ、
お互いに気持ち良くスペースを確保して座るという暗黙の了解があるはずなのに。
密着したまま、男はぼくのほうをジロジロと見続けます。
下から上までなめまわすように見ています。
そしてついに来ました!
「あの~」とその男がぼくに言ってきたのです。
ぼくは「ここはなめられたらアカンで、何にもこっちは迷惑かけてへん!なんやったら、そっちが席を移動せえへんのがまずいんちゃうんけ」と心のなかで気合を入れ、少し低めの声で、「はい」と応えました。
すると、その男は続けて、「そのジーンズはどこで買ったんですか?」と言いました。
なんと!ジロジロ見ていたのはギターではなく、ぼくの履いていたジーンズだったのです。
その後は、すっかり打ち解けて、「すごくいい色落ちですねぇ」とか「これはWAREHOUSEのやつでしてねぇ」「あ、オレも一本持ってます」「どのくらいのタイミングで洗濯してます?」「普段、仕事はスーツなので、なかなか育てるの大変なんすよねぇ」などと会話も弾んだのでした。
こんなからまれ方なら大歓迎です。