「空の彼方」に歌われる空は、須磨、塩屋、垂水、舞子を走る山陽本線の車窓から望む空。

blue-sky

 

歌や曲にはとっても具体的な内容が出てくるものもあれば、さっぱり何を歌ってるんだか分からないものもあります。「空の彼方」はどちらかというと後者で、何を歌っているのだかよく分かりません。言葉それぞれは難解なものを使っていませんので、分かりやすいはずですが、状況が見えてきませんし、何に対して歌っているのか、誰が歌っているのか、が明確ではないのです。

 

それでも、ぼくは作り手ですので、自分が作ったときの光景を覚えています。この「空の彼方」のサビに出てくる、「空にうつる アタシのカタチ」の空は、JR山陽本線の須磨から舞子辺りの海側の空です。空です、というよりも、そこらを電車に乗って眺めているときに思いついた歌詞です。なので、ぼく自身はこれを歌うときは、その山陽本線の電車の車窓からのイメージが心に浮かんでいます。

 

歌い出しの「移ろう景色に惑わされるから」というところも車窓の風景を想います。そして、眺めているようで眺めていないような感覚に陥り、心の風景にシフトしていくんだ、と考えています。この人がなぜ苦しんでいるのか、は読み解けませんが、思考は行ったり来たりしていて、「Clear」と「Let me know」なんてところに行き着いていることは分かります。

 

サビが重要です。「空にうつる アタシのカタチ」の「うつる」がひらがななのは映るだか移るだかの両方の意味を持たせたかったからです。そして、「アタシ」っていうこの曲にしか出て来ない人称が出てくることによって、「ぼく」ではなくて「アタシ」の歌だったんだ、ということを明かします。

 

しかし、結局、歌い手は不明です。ぼくが「アタシ」のことを歌ってるのか、「アタシ」そのものが歌っているのか。それは、この曲を歌う、そのときの気分次第で変わります。

それでは、できあがりを。

神戸に来られたら、電車に乗って、海側を眺めながら聴いてみてください。