堀江貴文「ゼロ」とちきりん「「Chikirinの日記」の育て方」の作られ方にはメジャーとインディーズの違いがある

chikirinの日記の育て方

chikirinの日記の育て方

 

twitterで堀江貴文(@takapon_jp)さんとちきりん(@InsideCHIKIRIN)さんをフォローしています。彼らが自分たちの書籍に関する感想をリツイートするので、「ゼロ」と「「Chikirinの日記」の育て方」の2冊がとても話題になっているように感じます。そして、それらはとても評判が良い。べた褒めです。そりゃあ良いことを書いてくれたツイートだけをリツイートするだろうから、そうなって当たり前ですよね。

 

ならば、ここは自分で確かめないと、ということで読んでみました。

どちらもとっても読みやすく、たしかに良い内容でした。内容に関する感想はすでに皆さんが書かれていますので、ぼくは両者の、その制作プロセスについて書きたいと思います。

 

チームで練りに練って作られた「ゼロ」

堀江貴文さんの「ゼロ」は、完全に自己啓発本です。自分の生い立ちや苦労話、コンプレックスなどを吐露して、あまり遠い先のことばかりに目を向けずに、小さな成功を積み重ねよう、という内容です。自己啓発本を幾冊か読めば出てくるような使い古されたような言葉ばかりで驚きました。堀江さん自身がどういう生い立ちだったか、とかライブドア事件のころがどうだったのか、とか刑務所の中はどうだったのか、などはとても興味あるところですが、主張しているところは、聞いたことあるようなことばかりです。おそらく、編集やライターと内容、構成、文言をよく話し合った結果だと思われます。実際に堀江さんはインタビューで、編集に言われたから自分のコンプレックスのことを書いた、とおっしゃってました。0章の刑務官のくだりからいきなり泣けるのですが、よく出来過ぎていてこわいです。この本を読んだらやる気にはなれますが、これまでいろんな人がこういうこと言ってきたよね、という感が否めません。まぁでも、こういうのが売れる世の中であるということです。「稼ぐが勝ち!」です。マス(大衆)をターゲットにするとこうなるのです。

 

昔のメジャー音楽の制作を思い出す

その昔、ウルフルズのトータス松本さんに密着しているテレビ番組(2010年に作られた映画のことではありません)を観たことがあります。その中で、レコード会社や所属事務所の人たちと数名で、作っている最中の曲を聴きながら、歌詞の文言を一言一句、「会議室で話し合っている」光景を目にしました。メジャーって、そういうものなのだ、とあらためて認識させられた瞬間でした。売れなければ、つまりマス(大衆)に受けなければ、そこで終わってしまう世界。メジャーの音楽とは、「会議室で作られる音楽」なのです。もちろん、すべてだとは思い(たくあり)ませんが。

 

「ゼロ」を読んで、このメジャーの音楽制作プロセスのことを思い出しました。これは「会議室で作られた自己啓発本」なんだろうって。だから、内容は本当に良く出来ています。読んでも間違いがないと思います。マイケル・ジャクソンのベストアルバムみたいなものです。

 

インディーズな「Chikirinの日記」の育て方

一方、ちきりんさんの「「Chikirinの日記」の育て方」はどうか。

この本はKindleだけ、電子書籍だけでの販売です。そして、原稿を書いて、構成を決めて、校正をして、Kindleで出版するまでのすべてをご自身でされています(なんと表紙までも!)。電子書籍としてKindleだけで販売するなら、最後まで著者自らの手でできるという手本を示されました。

 

キンドル・ダイレクト・パブリッシング体験記録

http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20131120

 

まさに、インディペンデントと言いますか、自主制作盤ならぬ、自主制作本なわけです。そんなことしなくても良い立場なのにやってみる行動力が素晴らしい。そして、プロセスを共有してる!ちきりんさんもメジャーの人であることは間違いないので、バンドで言うと、Hi-STANDARDみたいな感じかも知れません。しかしながら、やはり「「Chikirinの日記」の育て方」はその制作の姿勢からも広くおすすめしたいな、と感じます。

 

テレビで泣くマーケティング

出版後に、お二人の対談も実現したようです。

[ちきりん×堀江貴文 対談](前編)伝わらない悔しさを乗り越えて

http://diamond.jp/articles/-/46413

 

タイミングも絶妙です。

対談を読むと、お二人がどこをターゲットにして本を出しているのか、ということが分かります。出所後の堀江貴文さんがテレビに出て、涙を流しているのを見て、どこまでやるねん、気持ち悪い!と感じておりましたが、あれで感動する層を狙ったマーケティングの一貫なのだと理解できて、腑に落ちました。