ニューメキシコでアイデンティティを考える

 

adobe house

 

アメリカ南西部に行きました。

アルバカーキという街の空港に降り立って、最初の目的地サンタフェに向かいます。着いてすぐにレンタカーを借りて、というのが旅慣れた感じですが、やっぱり時差ボケとか右側走行とか、そういうことにビビって、乗合シャトルでサンタフェへ。

 

サンタフェまで、1時間半くらい。少しの移動も1時間半から2時間くらいが当たり前、というのが、アメリカらしい感覚です。久しく来ていませんでしたので、大陸的時間感覚に戸惑いました。

 

ここはニューメキシコ州というところ。移動の時間感覚はアメリカ的だと感じましたが、街の様子は、まったくアメリカらしくなく、 アドービ様式という、粘土と藁を練り合わせたもので作られた家が立ち並ぶところです。写真はタオスプエブロというネイティブの本物アドービですが、街に並ぶ建築は「アドービ風」であり、実際はコンクリートです。街はアドービ風建築ばかりでした。

 

スペインによる侵攻の歴史やプエブロ、つまりネイティブたちの反乱の歴史などがある、この地域。人種、民族も様々なようで、ネイティブ、スパニッシュ、メキシカン、アングロサクソンが入りまじっています。互いに結婚したりもしますので、本当に入りまじってます。

 

これだけ入りまじってしまうと、自分のアイデンティティというか出身というか、そういうものをしっかりと持ちたい、と思うようになるのだと感じます。ぼくには、日本に生まれて、日本で育って、当たり前のようにその文化を周りのみんなと共有できている感覚があります。しかし、こういう入りまじったところで生まれると、「どこそこ出身で、このような文化があって、このような言語で話しています」というようなものとしっかり向き合い、保持していかねばならないのだろうと思います。

 

現代に伝わる、藝術作品や工藝品、言語や様式など、それらすべてに自分たちのアイデンティティを守ろうという意気込みを、ここでは感じます。伝統は、現代に沿うよう形を変えていきながらも、受け継がれています。伝統というと、歴史や過去、ということをイメージしていましたが、なんだか前向きな感じなんだな、と考えを改めました。ましてや恨みつらみなんかではなく。

 

グローバル化に対してアイデンティティを守る方法が、もうすでにここにはあったように思います。

日本人のぼくには簡単ではないかもしれないけれど、青いドアの向こうに未来を垣間見ることができました。